カテゴリ
全体 家と庭 畑と山と食と循環 子育ちと環境 向こうの谷 野研ノート(家族) 野研ノート(地域) 野研ノート(デザイン) 野研ノート(社会) 野外体験産業研究会(活動) 野研ノート(ライフヒストリー) フィールドノート 生きる 働く 森の道を歩きながら 暮らしと時間 鍛錬と育ち 未分類 最新の記事
以前の記事
2021年 06月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2018年 02月 2017年 12月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 04月 2015年 12月 2015年 09月 2015年 07月 2015年 03月 2015年 01月 2014年 09月 2014年 06月 2014年 04月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 05月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 タグ
フォロー中のブログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
拝啓 森の花畑の守人様2015年7月9日の朝です。今年も赤と白のベルガモットがすごい密度で花をつけています。匂い立つ花がマルハナバチやミツバチをたくさん呼んでくれて、おかげ様で畑のカボチャやピーマンの実なりがとてもいいのです。向かって右側で勢い伸びているのはチダケサシやワレモコウです。一昨年から少しずつ田の縁や道端にあって草刈されていたものを移しているのですが、チダケサシは今から8月中旬にかけて、ワレモコウは秋に可憐な花をつけてくれます。まだまだ野の咲く草花の研究を進めねばなりませんが、徐々に早春から晩秋まで花の咲く畑にしていけたらいいなと思っています。 こちらでは月曜日から小降りの雨が続き、庭や畑や山の植物達が一斉に枝葉を伸ばしています。考えてみれば、地面の上の枝葉がこれだけ勢いよく伸びているということは、バランスをとるように地面の下の根も一斉に伸びているということなのでしょう。更に進めれば、梅雨の季節とは、土の中の菌や微生物の活動も盛んになり、植物の根の先の毛細根と菌・微生物の共生関係も強まる時期なのだと考えるのです。 だとすれば、草が一斉に伸びる梅雨の季節が草堆肥を仕込むに適した時期なのだと改めて姿勢を整え、梅雨の合間をぬって、草堆肥づくりを進めています。 この春、この2年間、草堆肥づくりに使用しているニュージーランド箱の設置場所を紅葉の樹の下に移しました。ニュージーランド箱には雨よけ用に板で蓋をしていたのですが、要は草が腐植するのに必要な”少し湿った状態”を維持するのが難しく、結局水が足りなくて中の草の乾燥が進み過ぎたり、逆に蓋をし忘れて草がびしょびしょの状態が続いたりしていました。それでも草堆肥はできていたのですが、去年の秋頃、かみさんが集落のお母さんに『昔は樹の下に草や落ち葉を積んで腐らせたものを畑に入れていたのよ』とお聞きしたと教えてくれて、「そうか樹の下なら日当たりも温度も湿度も安定している」と感じ入ったのを思い出し、春頃から箱を樹の下に移したらいいのではないか考えはじめていたのです。樹の下で箱の気候を安定させれば、つくる期間を短くでき品質も安定させられるのではいかと。今年は丁寧に、ヌカや土を混ぜているせいもあるかもしれませんが、現在の所、箱に入れた草はいつもよりうまく発酵しているようです。草は四分の1とか五分の1に目減りするので、あと1週間位でこの倍ほど箱に草を入れねばなりません。 草堆肥づくりに使う草の刈場は、向こうの谷の家の東側にある湿地です。家の東側は家の南側にある山からの水が集まる所で、小川が流れ、その周囲が湿地になっています。湿地はカヤなど背の高い草が繁茂する藪になりやすく、そうなると虫の巣窟にもなり、湿気が滞り家を傷めたりもするのですが、ここの水の流れを道をしっかりさせ、周囲を若干乾燥させて、草刈り場兼湿地の庭になるように徐々に手入れを進めています。 できるだけ注意深く草を刈っていくと、ギボウシやチダケサシやクサレダマや菖蒲など湿地に適応する草花が沢山生きていることがわかります。用心深く手をいれると分け入り難い湿地も人に心地よい風景に変わっていくのだと感じています。 春から家の東側の湿地のさらに奥にある藪になりかけている荒野や林も手をいれはじめました。それまでの、がむしゃらに刈払機で全てを刈り倒す方法を改め、まず木陰をつくって草の勢いをコントロールする目的で4月初旬に友人とともにコシアブラ(下写真1つ目)やしば栗(下写真2つ目)の幼木を山どりして移植しました。友人から山どり苗は強いと聞いていた通り、彼らは草や夏の日差しに負けることなく根付いていっているようです。ほとんど直根しか残っていないコシアブラの幼木も春先なら移植可能であることもわかりました。 幼木の植栽後、この後どうしようと思案していたのですが、5月中旬に植生調査のため訪れた広島の因島のある風景をみてイメージが定まりだしました。それは島の山尾根沿いのコナラ林の下に続く、木漏れ日のさす、ひと1人歩ける位の道幅の、素敵な森の小道でした。小道は心地よく明るく、道の脇の木々には三つ葉アケビや五葉アケビ、サルトリイバラなどが枝垂れ、道際にはまだ名前をしらない背の低い草花がいい塩梅で茂っています。そしてしばらく歩くとぽっかり明るい空間があったりします。 いままで、庭づくりとは”その空間をどう植物で構成するか”から考えはじめるものだと考えていたのですが、この小道を体験して、「荒地を庭に変えていくためには、まず荒地の中に素敵な小道を通すイメージをつくり、道を通すように用心深く植物を選びながら草を刈っていくことからはじめたらいい」と思い至ったのです。 6月下旬、早速、家の東側の湿地の奥にある草原にて小道づくりの実験を開始しました。まず、生えている植物をよく確認しながら、小道を通す所を探っていきます。植物の種類を確認すると気になっていた紅色の花をふわりとつける植物はクサシモツケソウだということがわかりました。そしてススキやスゲに隠れて、ヤマジノホトトギスやノコンギク、ノショウブ、ウツボグサ、ノイバラ、ヘビイチゴ、木イチゴなどの小さな群落があるのを発見しました。道はこれらの植物の群落の間を通すように、人1人通れる道の幅で、刈払機で定期的に同じ個所を刈り通しながらつくっていこうと考えています。3~4年後には道脇に所々植えているシバ栗やコシアブラが小道の上に枝を伸ばし、ちょうどいい木陰を作ってくれるといいなと思っています。 併せて、雑木林の中に小道をつくる実験にも着手しました。この道は上記の草原の小道から続いているものですが、すでに7~8mに育ったハンノキや杉やヒノキやリョウブなどの若木が鬱蒼と茂っており、地面には木陰の山野草や笹がまばらに生えています。 この林のイメージは”燃料林”です。この春に友人と林を確認した際、ある程度の大きさになった若木(簡単に伐倒できる大きさ)を収穫しながら更新する燃料林にしたらいいのではないかとの提案を受け、この林を道際に所々薪棚のある小道が通る美しい燃料林にしようと考え至ったのです。 ここも6月下旬から人1人通れる幅で刈払機を通し、ときおり道脇の樹の枝を梳く作業を行っています。そして、何とかこの冬までには森の中の薪棚第1号ができればいいなと思っています。 ゆっくりとお便りを書いている間に7月、8月と過ぎ、はや9月に入りました(この間、仕事や家事の合間に庭や家での新しい試みも展開しているのですが、それはまたの機会にご紹介したいと思います) 家の北西にある畑では今年で3年間、試験的に、ほぼ不耕起・無肥料で(種を播く溝以外は土を起こさずに、1年目の種周りの堆肥以外は何も肥料を与えずに)、トウモロコシと大豆を混植しているのですが、今年はトウモロコシがうまく実をつけています。大豆は知人から頂いた島根県の奥出雲町で30年間余、無肥料栽培で自家採取している種、トウモロコシは粉にするために野口の種から購入した札幌黄八行という品種です。 いわゆる完全な無肥料である自然栽培については半信半疑で、しかし耕起も最小限、堆肥を含め施肥は基本的にしない、窒素はマメ科との混植でマメ科の窒素固定力を生かすというやり方ができるなら、野菜づくりはすごく省力化できるなと考えていました。 木村秋則先生は”奇跡のリンゴ”で有名な方ですが、最近、読んだ『自然栽培ひとすじに』という本では自然栽培による野菜栽培の研究結果をまとめてられています。その第6章「自然栽培による野菜づくりの基本」で記述されている、”土の力を生かす耕起と播種・苗定植の方法”、”マメ科植物の積極利用で窒素を固定”の内容は特に興味深いので一部書き出してみます。 (なお、木村先生は粗く耕すようにすることで得られる効果を”乾土効果”と呼んでいます。その効果について、次の様に述べています。”…私が作物を栽培するときに、特に重視しているのが好気性菌の働きです。…酸素の少ない状態で嫌気性菌が有機物を腐敗させ(人間にとっての)害虫などを呼ぶという循環よりも、酸素の豊富な環境で好気性菌が有機物を植物が吸収しやすいように分解するという樹幹の方が、農業には適しているといえるでしょう。土を大きく粗く耕すことで、土中に酸素が入りやすい大きな空間ができ、土塊の表面は乾燥気味となって、好気性菌が活動できる環境を整えることになり作物の健全な生育を助けます。これを乾土効果と呼びます。逆に、細かく耕すと土中の空間は少なくなるため主に活動するのは酸素のない環境で生きる嫌気性菌。好気性菌が働くのは地表面に限られてしまいます。(pp77-78)”) ・肥料や堆肥を用いずに、どのように土壌に窒素を補給するか?・・・野菜づくりではりんごと同じようにマメ科植物の力を借ります。…ただ同じマメ科でも品種によって、よく根粒菌が働くものと、そうでないあるため注意が必要です。例えば黒豆などは、・・・地下部の根粒菌は極めて少なく、自身の生長を維持するだけにとどまっている印象です(pp118-119)。 ・大豆の播種の方法は2通り。「大家族法」…この方法では野菜が10~15㎝ほどに生長してから行います。野菜と同じ畝に野菜の両側に20~30㎝感覚で大豆を一粒ずつ置き、人さし指で第一関節の深さまで土に押し込んで土をかけます。大豆はある程度乾燥を好む植物ですから、覆土はあくまで指の第一関節程度(2cmくらい)に軽く行うことが大切です。次に「核家族法」…これは通路を挟んで野菜の畝と大豆の畝を交互につくるやり方です。大豆の間隔は「大家族法」と同じく20~30㎝。…枝豆を収穫するにはこちらの方法が向いているでしょう。枝豆の収穫は、根粒のついた根を残したまま地上部だけを刈り取るようにします。・・・土壌にとって貴重な窒素補給源となります。また枝豆を収穫した後、そのまま大豆の株間に大根を作付すると、非常によい結果が得られます。ちなみに大根は5年ほど連作しても大丈夫です(pp120-121)。 ・ヘアリーベッチは…今日では「豆すけ」などという商品名で雑草抑制効果もある緑肥として利用されています。根粒菌の働きは大豆よりも強いくらいなのですが、蔓性の植物なので作物によって生長を阻害されることがあり、注意が必要です。例えば丈の低い野菜(葉物類)と一緒に作付すると野菜を覆ってしまうと同時に、収穫時の手間が大変になります。また、トマトなども巻つかれて生長が止められてしまうおそれがあります。対してジャガイモなどの根菜類、果樹などにはうってつけといえるでしょう。播種はやはり植え付けた野菜が10㎝くらいの丈になったころ、30㎝ほどなられた両脇に置き、ごく軽く覆土します。…ヘアリーベッチは生長が速く春にまくと枯れるので、1年に二度播種するようにします(pp121-122)。 ・マメ科植物の利用は、りんご栽培の章で解説したように、窒素方を避けるために長期間連続して行わないようにします。根粒のつき具合を確認しながら(30個ついていたら翌年も播種、10個以下なら中止する)、3年間続けたら2年休むというサイクルを目安としましょう(pp122)。 以上の木村先生の実験結果や、今年の向こうの谷での自然栽培風の大豆とトウモロコシの混植栽培の結果のよさをふまえ、この秋から、幾例か、草堆肥を施用する栽培方法(有機農法)から好気性微生物の繁殖を促す耕起法×マメ科との混植による窒素供給(自然栽培)への切り替えを試みることにしました。 1つ目は枝豆収穫後の畝への源助大根と聖護院大根の播種です。これはスウィートコーンと枝豆の混植跡地の地上部を切り取った大豆の株間に源助大根という短根系の大根の種を播種したものです。隣のパオパオの中には同じ源助大根と聖護院大根が播種されており、若干播種時期が遅かったので加温してみています。これで併せて育ち方の違いも確認してみるつもりです。(ちなみに前作の混植栽培したコーンは比較的豊作、対して枝豆は極めて不作でした)。 守人様 今日は9月24日、先週から一昨年、山裾から移植したアキチョウジが満開になりました。 ベルガモットの花が7月末に終わったあと、8月からはフロックス、オミナエシ、芙蓉、オレガノ、ミント、ニラの花が次々と咲いていきます。そして、この年の花と畑の実なりをみていてわかったことがあります。畑のそばには常に花が咲いていた方が野菜や果樹には好ましいのだということです。幸運なことに向こうの谷の家や畑の周りには、この家にお住まいであったおばあさんが色々な宿根草を植えてくださっていて、勉強しながら花の時期や繁殖のさせ方を学んでいくことができます。これからは畑のそばの花畑というテーマにも実験と研究を広げていきたいと思います。 また、このお便りの中で書きすすめている「行政組織はなぜ自己の組織運営や事業・施策について自ら改善を行うことができにくいのか」は今回はお休みしますが、こちらもできるときに併せて進めていきたいと思います。
by mukouno-tani
| 2015-07-09 07:30
| 畑と山と食と循環
|
ファン申請 |
||